パソコン・レーシング

第17話


ところで、1位を突っ走っている「ホビーパソコンクラブ・チーム」は、2位の「アスリート・チーム」がじわじわと迫ってきていることに焦っていた。3位以上は決勝に行けるから焦らなくてもいいようだが、予選1位の場合、決勝の耐久レースのユニット数があらかじめ2時間分加算されるのだ。できれば1位で通過したい・・決勝にはマクロ・ソフト・チームや、雷鳥チームなどの強敵が500MHzクラスに入ってくるかもしれないのだ。シード権があるだけに、どのクラスにエントリーするのか予選が終わるまで分からない・・恐らく、予選の状況を見て、一番有利なクラスにエントリーするだろう・・あるいは全階級にエントリーする可能性もある・・

1位の「ホビーパソコンクラブ・チーム」のマシンは自作機・・それも800MHzのペンティアム3を480MHzにクロックダウンしたものだ。最新のコアとフルスピードキャッシュを内蔵するペンティアム3の性能はクロックダウンしたといえ圧倒的だ。「インテリジェント・チーム」が例のメール爆弾で順位を落としてからは、「ホビーパソコンクラブ・チーム」はほとんど1位をキープしている。

しかし、2位のチームのマシン仕様を知っているだけに怖いのだ。2位の「アスリート・チーム」のマシンはメーカー製とはいえアスロン500MHz搭載だ・・しかも、ベースクロックはDDRの200MHz、メモリーは100MHzのシンクロナスメモリーで、そのままの仕様で出場している。アスロンはペンティアム3と互角に戦える性能を持ったCPUだ、ただ、アスロン500MHzはキャッシュがハーフスピードだからペンティアム3より不利な場合もある・・・

「ホビーパソコンクラブ・チーム」にとって、自分たちのマシンのベースクロックを60MHzに落としていることが心配なのだ。ベースクロックは、そのマシンの基礎体力みたいなもの。それをクロックダウンして落としたということは、いいエンジンを乗せているが足回りが悪いレーシングカーと同じ意味なのだ。その上で、「ホビーパソコンクラブ・チーム」はグラフィックカードも高性能の最新型を搭載してる・・しかし、グラフィックカードが威力を発揮する場面はほとんど無かった・・それより、発表直後の新型カードだけに、ドライバのバグの方が心配である・・。さらに、グラフィックカードを取り付けているAGPスロットも本来のクロックでは動作していない。テスト中に付けていた別のグラフィックカードでは問題なかったので、ほとんどチェックしていなかった・・・今から考えると、テスト中に付けていたグラフィックカードのままで勝負すればよかった・・・

「ホビーパソコンクラブ・チーム」は、3位以上をキープするという戦術は最初から考えていない・・しかし、2位が迫っている現在、チーム内で今後の作戦をどうするか話し合った・・・・結論は、ペースを上げる・・首位以外は考えないことだった。しかし、ペースを上げたときにマシンがどういう挙動をするかは誰も分からない・・CPU稼働率、システムリソースなどを頻繁に見ながら、少しずつペースを上げるしかない。

・・・・続く


第18話

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