パソコン・レーシング

第18話


2位の「アスリート・チーム」は、そういった1位のチームの事情をよく知っていた。それで、ペースを上げ、ぴったりと後ろに付く作戦に出た。恐らく、差が縮まってきたら、1位のチームは焦って、さらにペースを上げるだろう・・・そこで、グラフィックカードまわりの不具合が表面化しやすくなりシステムがダウンすると読んだ・・アスロン500MHzマシンは、まだまだ余裕があった。相手が最新のコアを内蔵するペンティアム3とはいえ改造マシンだ、こちらは特別な改造はしていない・・安定性が問題なら優位に戦える・・。
案の定、1位の「ホビーパソコンクラブ・チーム」焦りだした・・

午前6時・・朝のニュースために報道陣が集まって・・にぎやかになってきた・・

ところで、3位と4位の争いは、もっと激しい・・3位のチームもクロックダウンしたペンティアム3だ・・一方4位のチームはごく普通のセレロンCPUだが、システムがUNIXだ・・こちらも、3位のすぐ後ろを4位がぴったり付いていた。

3位の「ゲームランド・チーム」はこの時刻、マシン設計者一人で操作(運転)していた。背後に迫る4位のマシンが気になってしかたない・・それで、チーム内でも自分しか知らない、ある方法を使うことにしたのだ・・それは、ドーピングプログラムだ!・・

本来、競技が始まる前のマシンの検査の後、パソコン本体は封印され開けることができない。また、システムを立ち上げる時には必ずBIOS画面の記録が取られる・・つまり、途中でベースクロックやCPUのクロックを変えることはできないようになっている・・公正な競技のためにはあたりまえであるが・・・

ところが、彼は、オシレータに小さなカスタムICを付けた上で、ソフト的にクロックを切り替えることができる仕組みを組み込んでいた。運良くそこまで検査は行われなかった。これなら、BIOSをいじらなくても、容易にクロックを上げることができる。とりあえず、そのドーピングプログラムを起動して、60MHzのベースクロックを75MHzにした・・CPUは600MHzで動作することになる。ドーピングの仕組みはあまりテストしていなかったが、運良く、問題なく動作した・・そして、ユニット数を稼げる重い処理を始めた・・4位との間がどんどん開いていく・・おもしろいくらいだった。しかも、かなり離れていた2位との差が縮まりだした。場合によっては1位争いに入れる・・

一方、エフマップは相変わらず5位だ・・

エフマップ「3位のペースが急に上がった・・やはり、ペンティアム3はこれくらいの底力があるのだろうか・・他のチームのペースも上がっているが、3位のチームほどではない・・作戦の違いなのか??・・よく分からないこともあるものだ・・」

・・・・続く


第19話

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